岩田規久男「日本経済を学ぶ」

日本経済の軌跡を、特にバブルの発生・崩壊から経済の長期停滞に至った時期を中心に解説しています。景気自体に循環性があることは仕方ないが、成長率を高める政策を導入すればさまざまな経済問題の解決も見えてくると述べています。具体的には、市場原理を…

岩田靖夫「ヨーロッパ思想入門」

ギリシア哲学、キリスト教、近代ヨーロッパ哲学の概要を語る内容ですが、随所に出てくる哲学用語を理解するのは大変、というか難しい。哲学を理解するのが難しいのは日本語への翻訳が堅すぎるところにも要因があると思う。原典に忠実なのかもしれませんが。…

宮部みゆき「魔術はささやく」

複数のストーリーが交差する物語をこれほど鮮やかにまとめてしまう筆力には脱帽するしかありません。人間のドラマ、心理が描かれ、そこに謎解きといった要素も加わるのだから、これこそ正に最高のエンターテインメント小説といってもいいのでは。

向田邦子「思い出トランプ」

思い出トランプ (新潮文庫) 思い出したくもない過去。向き合いたくない現実。それでも決して忘れ去ることはできないし、ふとしたことでよみがえってくる感覚(何ともイヤな気分になる)というのは誰でも持っていると思います。そんな情景がこれでもかと展開…

村上春樹「羊をめぐる冒険」

何かを失っていく感覚というのが村上春樹作品によく見られるテーマだと思いますが、どの作品でも主人公のパラノイア的物語に終わらないのは、脇役の実在感に重みがあることや現実の社会情勢を無視していないことが理由かな。リアリティと幻想のバランスが絶…

村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」

羊その他のつながりがあるので前作?をあらかじめ読んでないとつらいかなと思いましたが、実際はそんなことはなかったです。村上春樹の小説に惹かれる理由として、本のあらすじ内容はもちろんですが、会話のセンスや舞台設定が素晴らしいこともはずせません…

福沢諭吉「学問のすすめ」

冒頭の言葉「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」はあまりに有名ですが、それだけでなくこの本の文章はリズムが素晴らしい。ぱっと見たところ漢字は多いし、言葉遣いも古めかしいところはありますが、一字一句を追わなくても内容が頭に入ってきます。…

カポーティ「冷血」

冷血 (新潮文庫 赤 95C) 爆笑問題の深夜のラジオ(TBSラジオ火曜深夜1時)を聴いていると、しばしば本の話題に。そこで必ずと言っていいほど太田さんが推薦するのがこの本です。 内容は一家4人皆殺し事件を扱ったノンフィクション・ノベル。事件のあらまし…

ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」

ベストセラーになるのも納得のおもしろさです。登場人物もそれほど多くなく、翻訳物に抵抗がある人でもすらすらと読めると思います。すでに映画化の話は固まっているようですが、これほど映像でも見てみたいと思わせる話もなかなか無いのでは。角川書店のサ…

吉川幸次郎、三好達治「新唐詩選」

漢詩の入門書として手元に置いておく意味で買いました。古い本ですが和訳も読みやすく、一部英訳も載っていて満足度は高いと思います。

福井晴敏「川の深さは」

組織(警察であったり自衛隊であったり)の中で苦悩する個人を描いている冒険小説とでも言うのでしょうか。この小説では最近の動静を取り込みつつも、やはり読みどころは人間ドラマにあります。その当事者にバカにされないように特殊な舞台をリアリティを持…

井波律子「故事成句でたどる楽しい中国史」

本屋で中国の歴史物をあれこれ物色していたところこの本が目にとまったので読んでみました。ジュニア新書とありますがなかなかどうして読み応えがあります。後半は駆け足気味(といっても唐の時代ぐらいから)ですが、これは作者も書いているように時代が下…

吉川英治「三国志」

吉川英治の作品では「宮本武蔵」を読んだことがありましたが、今回とうとう「三国志」を読み終わりました。古代中国・三国時代のおよそ50年間の話ですが、次々と展開する挿話の数々を読むと、これが100年にも満たない期間に起きたこととはとても思えま…

新田次郎「アラスカ物語」

主人公の晩年の境遇に悲しさは感じますが、なんと数奇な人生。日本の歴史には登場しない人物だけに知名度は高くはないと思いますが、偉人と呼ぶにふさわしいと思います。それにしても伝記物ははまると止まりませんね。

新田次郎「栄光の岩壁」

栄光の岩壁(上) (新潮文庫) 栄光の岩壁(下) (新潮文庫) 最近、新田次郎を立て続けに読んでます。実在人物をモデルにした小説ですが、いろいろな脇役(架空の人物もいると思う)を登場させることで読むのを飽きさせません。単なる伝記ではもっと味気ないも…

新田次郎「孤高の人」

孤高の人(上) (新潮文庫) 孤高の人(下) (新潮文庫) 期待に違わずすばらしい本でした。主人公の加藤文太郎もこれほど立派に描かれると面はゆいのでは。

真保裕一「奇跡の人」

結末の場面にいたって、やっぱり読んだことがあったなと気づきました。この本がミステリーの範疇に入るかどうかは分かりませんが、ミステリーの中には時間がたって忘れた頃に読むとまた楽しめる本が多い気がします。主人公のストーカー的行動が読者に嫌悪感…

新田次郎「八甲田山死の彷徨」

一気読みした本は久しぶりです。というわけでISBN画像も大きく。今まで新田次郎さんの本を読んでなかったのは不覚でした。こうした小説をノンフィクションとは言わないのかもしれませんが、臨場感あふれる描写がこの事件を余すところなく伝えてくれます。長…

ボブ・ウッドワード「攻撃計画」

この著者の作品の魅力は、会話の生々しさが本当にその場にいたかのように再現されているところでしょう。この本は2004年の大統領選挙の前に発表されるということで、当初はホワイトハウスやブッシュ陣営も警戒していたようです。大量破壊兵器が発見されなか…

村上春樹「1973年のピンボール」

三部作の一部というわけで、「風の歌を聴け」にも登場した<僕>と<鼠>が登場します。ただ流されるままの生活を送っているように見える登場人物たちですが、それでも内心ではさまざまな葛藤を抱えている様子が描かれます。ピンボールはそんな<僕>の数少…

雫井脩介「火の粉」

被害者の家族の執念が実るのか、あるいは彼らの怨恨、妄想なのか。やけに鋭い推理や昔の友人の登場などで都合がよすぎるところもありますが、一気に読ませるところはさすがです。老人介護や幼児虐待などもからめて各人の本音や心理が明らかにされていくさま…

阿刀田高「旧約聖書を知っていますか」

旧約聖書の内容がわかりやすく説明されています。それはイスラエル人の歴史でもあります。イスラエルの印象として、「なぜパレスチナ人とそこまで対立しなければならないのか、少しは妥協すればいいのに」といった考えがありますが、この本を読んでそれが彼…

カミュ「異邦人」

主人公ムルソーの法廷での達観したようなものの見方が面白い。 「被告席の腰掛の上でさえも、自分についての話を聞くのは、やっぱり興味深いものだ。検事と私の弁護士の弁論の間、大いに私について語られた、恐らく私の犯罪よりも、私自身について語られた、…

義経関連本

義経伝説をゆく―京から奥州へ作者: 京都新聞出版センター出版社/メーカー: 京都新聞出版センター発売日: 2004/07メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る義経に関する本はたくさん出ていますが、この本はお勧めです。写真や挿絵、…

ヘミングウェイ「日はまた昇る」

実は岩波版で読んだんですけど、新訳が出ているようなので新潮版の文庫本を紹介します。この本は出版当時大変な話題を呼んだようで、ロストジェネレーションと呼ばれた世代の生き方がこのように描かれることもそれまではなかったようです。酒と女などの享楽…

阿刀田高「新約聖書を知っていますか」

この本のエピローグにも書かれていますが、欧米の文化に触れるとき聖書の知識は欠かせないものです。イエスとその弟子たちの人となりから聖書の構成まで、作者の推理を交えながらの文章は読みやすく、キリスト教初級者の取っ掛かりとしてとてもよかったです。…

村上春樹「遠い太鼓」

外国に滞在していたときのスケッチをまとめたものということですが、村上さんが言うように何らかの文章を書いていくということは自分の中のバランスを保つ、あるいは知るのに有効なのかも。今、多くの人がブログなどを書くのも自分を表現したいというだけで…

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 中巻 下巻」

「この物語は第一の小説で、第二の小説もあるのだ。」という冒頭の作者の言葉をすっかり失念してました(巻末の解説を読んで気づいた)。なので主人公アリョーシャの悲劇的な生涯という語りがあったので、ひょっとしてこの事件の犯人あるいは殉教者にアリョ…

ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟 上巻」

かなり前に買ってあった本ですが読み始めました(上巻だけですが)。いろいろな複線が張り巡らされていてこれからの展開が楽しみな上巻です。基礎知識としてキリスト教のことをもっと知っておけたらよかったかなと思いました。今年になって文庫の装丁が変わ…

糸井重里「ほぼ日刊イトイ新聞の本」

『ほぼ日』のコンテンツではまったもの。 『昨夜、オレは観た!』 http://www.1101.com/athens2004/index.html 『新選組!』with ほぼ日テレビガイド http://www.1101.com/2004_TV_taiga/index.html 編集してる人のセンスが好き、そして投稿してる人のセンス…