ボブ・ウッドワード「攻撃計画」

攻撃計画(Plan of Attack)―ブッシュのイラク戦争
この著者の作品の魅力は、会話の生々しさが本当にその場にいたかのように再現されているところでしょう。この本は2004年の大統領選挙の前に発表されるということで、当初はホワイトハウスやブッシュ陣営も警戒していたようです。大量破壊兵器が発見されなかったことでイラク戦争大義に疑問が生じていることも書かれています。しかし、この本に登場する人たちの真摯なやりとりを読んで、彼らを信頼すべき理由があると思った人たちもまた多いことでしょう。事実、この本はブッシュを擁護することになったという評論も出たようです。
本の内容では、イラク戦争開戦時に行われたピンポイント爆撃の裏話が生々しい。結局失敗に終わったこの攻撃にも相当切迫した事情があったことには驚きます。この本の取材については、主要な政権幹部たちにブッシュ大統領自らが協力するよう呼びかけたようです。彼らもウッドワードの著作では自分たちが思っている以上に魅力的(ドラマティックといってもいい)に描かれることを知っているのかもしれません。
ところで、日本ではこのような作品が出版されることはあまり聞きません。多くの週刊誌の政治評論に似たようなものは書かれていますが、後で単行本になることなどほとんどないのでは。新聞社のバックアップなどがないと個人の取材では限界があるのかもしれません。その意味で、道路公団改革のときに猪瀬直樹氏が果たしたような役割は重要です。あれだけ内部のやり取りが明るみに出ることは今までにはなかったことです。このような本が日本でも書かれるようになれば、後の政治家や官僚も参考にできて助かると思うのですが。