吉川英治「三国志」

三国志 (1) (吉川英治歴史時代文庫 33)
吉川英治の作品では「宮本武蔵」を読んだことがありましたが、今回とうとう「三国志」を読み終わりました。古代中国・三国時代のおよそ50年間の話ですが、次々と展開する挿話の数々を読むと、これが100年にも満たない期間に起きたこととはとても思えません。これだけ戦争ばかりしていれば話の種には事欠かないという面もありますが。ただ当時の日本はまだ卑弥呼邪馬台国の時代だったという事実には驚かされます。魏、呉、蜀の三国のうち劉備元徳諸葛孔明を擁した蜀の話が中心にはなりますが、誰でも名前だけなら聞き覚えのある同時代の英雄たちの活躍はひいきなく描かれていると思います。歴史の解説書を読むのも勉強にはなりますが、この本を読んでしまうと小説の力を感じずにはいられません。影響力がありすぎてこの本でその人物の印象が決定づけられてしまうという恐れもあります。ただこの読後感に浸っていたい、他の本を読んでケチつけられたくないと思わせるのもまた事実。その点は要注意かも。